
強硬な作業着手に抗議するカヤックの列に中電の船が対峙する。
9月22日、上関原発予定地の海域埋立工事に着手するためのブイ設置作業は、反対派住民らの抗議活動で延期されて10日目を迎えました。ブイが置かれている平生町(ひらおちょう)田名埠頭(たなふとう)ではこの日、長引く抗議活動の疲れや生活への影響からか、祝島の漁船や住民らの姿はなく、クレーン台船によるブイの積み込みが決行されるとの見方が広がっていました。しかし、海を守ろうと集まった有志のシーカヤック約10隻が、朝から埠頭前に1列に並び、中国電力側のクレーン台船の接岸を阻止し続けました。正午前には祝島の漁船約5隻も駆けつけ、中国電力は15時に作業中止を決定しました。上関原発計画27年間の中で、祝島以外の船のみによる海上阻止行動が行われたのは、恐らく初めてと思われます。

埠頭に置かれたブイ(右)の前に並んだシーカヤック
この日シーカヤックに乗ったのは、数年前から祝島の阻止行動に協力してきたカヤック愛好家や、上関原発に反対する地元の若者、県外から駆けつけた有志など約15人。朝7時、時折風雨が舞う荒れた海上で、ブイが置かれる埠頭前に9隻が横1列に並ぶと、7時半に中国電力の警戒船2隻とクレーン台船が到着し、対峙する形となりました。クレーン台船はいかりを下ろしましたが、すぐに発進できるように牽引船(タグボート)を前方につないで待ち構える態勢をとり続けました。

カヤッカーに近づきビデオで撮影しながら呼びかける中電社員
中国電力側は、作業船の進入のために進路を開けるよう船上から求めた上で、ビデオカメラを回しながらカヤッカーひとりひとりに接近して名前や目的を尋ね、損害が発生していることを肉声で警告したようですが、陸上に集まった反対派住民のマイク音などにかき消され、カヤッカーらも呼びかけに応じなかったようです。
その後中国電力の警戒船は、小刻みに船を前後させるなどしてカヤック隊に圧力をかけ、あわや衝突という距離まで接近した時は、陸上の反対派から悲鳴があがり、「危険です!」「危ないからやめて下さい!」などとマイクで注意が呼びかけられました。
また、10時前には祝島の漁船1隻が現場に現れ、様子を伺って帰っていきました。

推進派の漁船がカヤックに接近し、阻止活動に対して荒い口調で抗議した。
11時頃には、今度は地元の原発推進派の漁船1隻がカヤック隊の前に現れ、「なんしよるんか? 遊び半分なら負けんど」「いい加減にせーや。漁ができんじゃないか、お前らがこうして邪魔しちょったら」などと厳しい口調でカヤッカーに迫りました。この漁船は、前日に地元ニュースの取材で「イワシ漁の迷惑になる」と苦情を述べていた山口県漁協平生町支店の漁業者のようです。カヤッカーらが無言を貫き続けると、漁業者は漁船を急発進させ、カヤック隊の列の間に割り込むように猛スピードで旋回を繰り返した後に、去っていきました。危険な状況に緊張が走りましたが、後方に見守っていた海上保安庁の巡視艇は静観していたようです。

海保の巡視艇(右後方)がカヤックに対して作業船から離れるよう呼びかけた。
11時過ぎ、潮の流れや風向きが変わり、シーカヤックの列が前方に流されると、クレーン台船とシーカヤックが数mの距離にまで接近しました。すると、後方で両者の対峙を監視していた海上保安庁の巡視艇が、「作業台船が岸壁に接岸しようとしています。進路をふさぐと航行に危険ですので、船から離れて下さい」と、二度に渡ってマイクで呼びかけました。

後退するカヤック隊に中電の警戒船とクレーン台船が迫る。
これを受けてカヤック隊が元の位置に引き返そうとすると、中国電力側もマイクで「進路を開けて下さい」と呼びかけながら警戒船を激しく前後させながら前進し、一時騒然となりました。しかし、カヤック隊が元の位置に戻ると、海保の巡視艇は後方に下がり、再び中国電力側とカヤックの対峙が続きました。

祝島の漁船が到着すると中電側に諦めムードが広がった。
正午前、こうした状況を知った祝島の漁船が、水色の反対旗をつけて次々と駆けつけ、タグボートの前に立ちはだかりました。すると、これまで攻勢を仕掛けていた中国電力側の態度は一転し、警戒船も後方に退きました。最終的に祝島の船は約6隻が現地に集まり、張りつめた緊張感が解けたのか、カヤッカーらにも笑顔がこぼれました。

祝島に戻る漁船に手を振るカヤック隊のメンバー。
13時半過ぎ、中国電力側はクレーン台船のいかだをあげ、警戒船とともに撤収しましたが、この日は作業中止の旨をマイクで発表をせず、無言のまま停泊港のある上関町方面へ帰っていきました。それを確認して祝島漁船やカヤック隊も引き揚げましたが、14時半頃にクレーン台船が上関町沖で引き返したことが分かると、再びカヤック隊が田名埠頭沖にカヤックを並べる一幕もありました。結局、15時頃に中国電力はこの日の作業中止を発表したようです。
シーカヤック上から撮影された動画。
道義的な対話の場が持たれぬまま、埋め立て工事着手を強行しようとする中国電力の手法に住民の不信感が募る中、祝島以外の船と住民による初めての海上阻止行動が起き、上関原発計画問題は新たな展開を迎えたといえそうです。この日のマスコミ取材に対し、カヤック隊のリーダー格で山口県長門市から来た男性は「原発は祝島の人だけの問題ではない。かけがえのない海を埋め立てて原発をつくる問題に多くの人が耳を傾けてほしい」と話し、上関原発を建てさせない祝島島民の会の山戸代表は「原発に反対しているのは祝島だけではない。(推進派は)祝島だけ孤立させたがっているけど、逆に広がっている証明」と話したようです。
(※尚、現地のリアルタイムレポートはブログ「RadioActive」に詳しく紹介されています)
山口県内で放送されたニュース。

